離婚するときは、決めるべきことがたくさんあります。結婚期間中の財産その他を清算しなければならないし、子供の生活のことも考えなければなりません。こういう大事なことは、離婚届を出す前にきちんと文書にしましょう。
今まで、養育費ひとつをとっても、十分に支払われているとはいえず、子供を引き取った母親は経済的に逼迫した状況に追い込まれるのが珍しくありませんでした。今でも、根本的には変わってないかもしれませんが、最近は、離婚するときは、財産その他に関する取り決めをして文書化するものだという意識が高まってきました。
1. 離婚協議書が必要な理由
離婚前や離婚直後は、今までの生活の延長線上で将来のことを考えがちですが、日々状況は変わっていき、子供がいても、元夫婦はだんだん疎遠になることが多いものです。そうなってしまうと、養育費などについて、話し合うことは難しくなります。
日本では、離婚の9割が協議離婚で、合意があれば、非常に簡単な手続きで離婚できます。協議離婚では、離婚条件を公的に証明してくれるものがありません。自らの手で、離婚の契約書(離婚協議書)を作成しない限り、権利の行使が思うようにできないのです。
民法に、養育費と面会交流について明記され、これを受けて、養育費と面会交流についての取り決めを行ったかを記入する欄が離婚届に新設されました。しかし、取り決めたかどうかを尋ねるだけで、虚偽の記載をしてもチェック機能がないのです。
2. 離婚協議書を作ればそれで十分なのか
離婚協議書は元夫婦の間の契約なので、履行にあたって、どうしても甘えが出てきます。 毎月養育費を支払わなければならないとわかっていても、ちょっと待ってくれるだろう、きっとわかってくれるだろう、という気になります。
受け取る方も「自分の子供なんだからきっと支払ってくれるだろう。」と、つい楽観視します。
離婚協議書で十分なケースは、一括払いで、かつ、既にお金の用意がある場合です。あとは、書類作成前に、既にに支払いが済んでいるときです。この場合は、支払ったお金の名目・金額・支払日が証明できれば十分です。
離婚したら段々事情も環境も変わってきます。新しい家族ができるかも知れません。 特に、給付金や分割払いがある場合は、離婚協議書では不十分です。リスクのあるときは、公正証書にしましょう。
3. サンプルを見て作ればいいの?
離婚関連の本を読むと、離婚協議書のサンプルが必ず載ってます。最近は、ネットにもサンプルがあふれています。「これなら、お金を払って専門家に頼まなくても、自分で作れる」と思いますよね。
しかし、サンプルは、具体的な事象に沿ってないので案外抽象的ですし、漏れもあります。
サンプルの役目は、「離婚協議書って、こういうものですよ」と知らしめることであって、「これをそのまま契約書として使ってください」というものではありません。
自分で作ってもいいですけど、少なくとも専門家によるチェックをお勧めします。
4. 分ける財産がない人の離婚協議書
「離婚協議書は、財産のある人が作るもの」そのように思っている人がいます。「子供がいるならまだしも、うちは、何も分けるものはないよ。慰謝料を払う理由もないし。」
それでも、離婚するときには協議書を作ってください。分けるものがないなら、分けるものがない事実を明記して、お互いそれで納得したからこれで清算完了と文書上で宣言するのです。
後になって、隠し財産があるんじゃないか、慰謝料がもらえるんじゃないかと、いろいろ請求されることがあります。「何かがある」の証明は容易ですが、「何もない」という証明は困難です。
離婚協議書を作ることで、トラブルを未然に防げます。
5. 自分たちで作る合意書
金銭の支払いに関わることは専門家に相談すべきと思いますが、離婚するにあたっては、それ以外のこともいろいろと調整が必要なことが多いはずです。
家財道具をどのように分配するか、別れた後も交流を続けるか、そのためのルールはどうするのか、細かい約束事は、自分たちで合意書を作って、1通ずつ保管してください。
双方が納得すれば、改変も自由にできます。「言った、言わない」で喧嘩することもなくなります。
離婚後も比較的関係が良好なケースでは、毎週のようにご飯を食べに訪問し、子供たちと一緒の時間を過ごす人もいます。関係が良好なればこそ、最低限の守るべきルールが必要なのです。それを合意書としてまとめてみてはいかがでしょうか。
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